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認知症になっても大丈夫です

〜3人の認知症の方をお世話する中で考えたこと〜
第1回 心と感性は奪われない
第2回 認知症になっても新しい記憶ができることを学ぶ
第3回 興奮から安心へ
第4回 体の傾きと手の温もり
執筆:逅里苑 デイサービスセンター 生活相談員 六車
便り第1号 「心と感性は奪われない」
今、ロングショートステイを利用しているS氏と関わらせていただいています。
S氏は、60歳という若さで認知症と闘っています。
ご家族の方から在宅で生活していたころの話、在宅で困り精神科へ入院したころの話、
精神科から施設へ移った話を関きました。ご家族さんの表情が涙目になっていたことを思い出します。
ご家族さんの思いは、「穏やかになってほしい」「穏やかな表情で自宅で一緒に過ごしたい」、
ということでした。私も在宅復帰に向けて協力させていただきたいということを伝えました。

S氏と関わっていて、毎日、毎日、いろんな事に気付かされます。
S氏と一緒に峰山公園に行った時の話です。
施設から外へ行きましょうとお誘いし、エレベーターの前まで行くが、立ち止まり
「行かん」と拒否されます。慣れていくうちに、エレベーターに乗ることができたと喜んでいましたが、
次は車に乗ろうと声をかけますが、車に乗ることに不安があり、車の前を行ったりきたり、
椅子に座るという認識はありますが、座って足をまわすという認識はないため不安な状態なんだと
気付き、リクライニング式の車で移動し、峰山公園に行くと、階段に不安を覚えました。
階段は上らず平地の方を選んで歩かれました。
そして、家族連れできている子供たちに興味を示されました。
とてもいい表情でにっこりと笑顔でみつめておられました。
S氏は、理解できないこと、認識のない事、人への恐怖心や不安があることに気付きました。
(S氏は右。足下のおぼつかないK氏を気遣っています。)

何日間も続けて外出しました。そんなある日のことです。
峰山公園に到着すると「ありがとう」とおっしやられました。
記憶は奪われ続けますが心と感性は奪われないのです。
私は、とても驚いたのと同時に嬉しく思いました。今日この頃です。
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便り第2号 「認知症になっても新しい記憶ができることを学ぶ」
認知症になられた初期の頃は、できていたことが少しずつ奪われていきますが、
それだけではないのです。S氏は、階段の上り下りができませんでした。
外出先の峰山公園の階段で職員が上ったり下りたりしているのをみているうちに
S氏も恐怖心がなくなったのか、要領をえたのか上り下りできるようになりました。
恐怖心がなくなったのはよかったのですが階段の危険性を認知できず
三段の段差から足を踏みはずし転んでしまいました。階段の上り下りの仕方だけでなく、
危険だということを伝える同時に、この時期は特に目配り気配りをしっかりする必要があると感じました。
それから、S氏は階段だけでなく食事面でも回復されました。以前は、職員が食事介助していました。
まずは、スプーンを使って食べてもらうことから始めました。
そして、集団生活のなかで他の方がお箸と、器を持って食べている姿に刺激され、
S氏も自然とお箸と器を持って食べられるようになりました。
私は、S氏がいろんなことが少しずつできるようになって自信につながっているように感じました。
S氏は少しずつ新しいものを身につけ生き生きとした生活をされている今日この頃です。
認知症の方を介護されている方、お互いに情報交換しよりよいケアにつなげていければと思います。
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便り第3号 「興奮から安心へ」
S氏と出会って1ヶ月が過ぎました。表情の穏やかな日が増えてきました。
そのような中でも興奮されている時もあります。
興奮という言葉を関くと怒っているのかなと必然的に思ってしまう傾向があります。
興奮は、嬉しい時にも興奮されます。その方の心情や感情のバロメーターです。
S氏が興奮されている時は、S氏の側から少し離れたところから様子をみています。
しばらくすると、興奮はおさまっています。私は、興奮されることは悪いことだとは思いません。
S氏が感情を正直に表に出してくれて嬉しいと思います。
日々の生活の中でS氏を含め認知症の方がいろいろ私に話しかけてくれます。
そのような時は、ありのままを受け入れその方の話に合わせていきます。
私は、その時々に応じてS氏の友達であったり、娘であったりします。
そうすることによって、S氏は安心感をえられるようです。訂正すると混乱してしまいます。
一度記憶は失われてしまっても、また新しい関係が築かれていきます。
日々介護に携わっている方々、ご近所の方々、匿名でもかまいませんご連絡お待ちしています。
住み慣れた在宅で少しでも長く生活していただける支援をさせていただきたいと思っています。
みなさんとお会いできることを楽しみにしています。
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便り第4号 「体の傾きと手の温もり」
せみの鳴く声で夏の熱さを感じます。S氏は、6月より日中デイサービスで過ごしています。
最初は、自分の居心地のいい居場所を探し歩いていました。
そこには、いつもと違った空気が流れていました。
デイサービスを利用され、1週間がたとうとした頃です。
S氏が朝起きてくると体が左に大きく傾いているのです。
偶然に来苑されていたご家族の方も心配されてましたが、
「○子がどんなに機嫌が悪くても、また来るのと言うとうなずくんです。」と嬉しそうにおっしゃられました。
翌日、体温を測ると熱があるのです。1週間程熱は続きました。
食欲はあるし、咳も出ないし何からくる熱なのか分からなかったので、
嘱託医の先生に相談し、血液検査をしました。特に異常ありませんでした。
先生から頂いた抗生物質をのみ9日目に熱は下がりました。自然と体の傾きも治ったのです。
アルツハイマー型認知症の方は、時々体が左右に傾くことがあります。
体が傾いた時は、私たちに何かのサインを送っていることが多くあります。
体に不調があっても本人さんも気付かないこともあり、分かりにくいです。
今回の傾きの原因となったのは、熱が出て体調が崩れるというサインだったのです。

今では、体調も回復され、デイサービスにも慣れてきて、
自ら職員の方や利用者の方へ寄って行き、一緒に歩こうと言わんばかりに手をそっと握って来られます。
周りの方々のS氏を見るまなざしも少しずつ、変わってきているように感じます。
そして、最近嬉しかったことがあります。デイフロアで不安そうにされていた人がいたのです。
S氏は、その方にそっと手を差しのべたのです。
その瞬間にその人の表情が、パッと明るくなりお元気になったのです。
S氏の手は、いつも温かく、人に元気や勇気を与えてくれているのです。
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